しかし実際に使われている焙煎器はドラム式(熱風式)ばかりです。
後でこの方式については詳しく説明しますが、ドラム式では熱風を豆が入っているドラムの中に吹き込んで焙煎する方法です。ドラム式が採用される理由は1つだけ。ドラム式は大量の豆の焙煎に適しているからです。業務用では処理能力が味より優先されています。
一方,遠赤外線式では大量焙煎が困難なため業務用には不適です。
ですが、両者では明らかに味に違いが生じます。
炭火焙煎の豆と一般的なドラム式焙煎で煎られた珈琲を一度飲み比べてください。遠赤外線式では味がまろやかで、すっきり、後味に甘さも感じられます。ドラム式で焙煎された豆では、私には口に入れた瞬間からトゲが有る様に感じられ、喉で感じられる後味にも尖った刺激が残ります。
この違いは熱源の違いにあります。熱風式では対流による熱、あるいは伝導熱を利用しています。これらの熱伝搬には温度差が必要です。熱は高い所から低い所に移動します。温度差が無いと熱の移動は有りません。、その移動量も温度差に比例します。ですから、熱風式では先ず空気を200℃近くの高温にし、空気より低温の豆に熱を伝え、豆の表面が高くなると、表面と内部に温度差が生じるので低温である豆の深部へ熱が移動します。
一方遠赤外線は物質の内部へ数百ミクロン程浸透し,その部位にある分子を振動させて摩擦熱を生み出し、光エネルギーを熱エネルギーに変えています。まるで豆の中にヒーターを持っているのと同じです。ですから豆の表面を高温にする必要はありません。放射された遠赤外線は全て豆の中で熱エネルギーに変わるので無駄がありません。また表面部から内部への熱流が高いレベルで供給され、しかもそのレベルが加熱を続けている間、ほとんど低下することがありません。このため遠赤外加熱では、物体深部の昇温が熱風加熱などに比し格段に速いのです。(遠赤外線協会 FAQ20)
以上の様に、遠赤外線の利用は豆の中にヒーターを持ったと同じで、熱は一定速度でしかも均一に豆全体を加熱し、焼ムラが出来難いのが遠赤外線の利点です。これが豊かな香りと円やかな味の理由です。また温度制御も簡単で、そのうえ、100℃程度にしか加熱しません。
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